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自販機の明かりの眩しさに目を泳がす、あの夏の夜。 北川悠理

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「蝉の声が聞こえた気がした。          ーまだ夏は終わっていなかったんだ。」 ラジオの音が聞こえる。 昭和の笑い声が耳元でした。 流れるコマーシャルと それを黙らせるように鳴る騒音。 色褪せない歌謡曲に目を閉じる。 シートベルトをした。 窓の外を覗く。 いつもと変わらない風景に目を閉じる。 タクシーを降りた。 走る。 タクシーで来た道を走る。 逆走する。 何かの群れを掻き分けながら、懸命に。 計り知れない未来に胸が踊る。 心が震える。 北風が私を引き留めようとする。 そよ風が私の頬を撫でる。 冷たい。 あたたかい。 頭が、温まる。 混ざる。 軽くなっていく。 駅に着いた。 電車には、乗らな...
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